ハンナ・アーレント──屹立する思考の全貌 (ちくま新書)本ダウンロード無料pdf
ハンナ・アーレント──屹立する思考の全貌 (ちくま新書)
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によって 森分大輔
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何ものにも依らないユニークな「手摺なき思考」が注目されたアーレント。本書は、全体主義が勃興して消えて行った激動の現代史を考察し続けた彼女の思索の最深部に迫る一書である。哲学、政治、思想という三つの補助線を駆使しながら主要な各作品を詳細に読みとき、時代を超えて屹立する思考の全貌を把握する。悪の問題、世界疎外、経験と思考、……人間の現実を徹底して追究した問題群を、いま改めて問いなおす。
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著者の精緻な読み解きに感心した。アーレントの新書版による解説書は数冊あるが、本書は西洋政治思想史の領域からアーレントの政治哲学にアプローチする好著である。ポイントは、アーレントが「活動」=日常生活を公共生活と見なし、西洋形而上学を現実生活から遊離した空理空論と批判して現象学や特にハイデガーの存在論と訣別し、ヤスパースの実存哲学に接近していったということにあると思われる。しかし、このアーレントの見方は正しいのであろうか?現象学は、空理空論なのであろうか?フッサールは主観と客観の一致を証明するために、主観を分析し、現象学的還元を行うことによって、主観と客観の一致を証明しようと試みた。この証明は、論理空間における理性的思考の営みである。論理空間は理性が求める真理が生まれる場を意味するものであって、現実から出発し、現実を証明するために理論的に要請されるものであって、論理空間における証明は、空理空論ではない。このような見方は、アーレントの誤解か、著者のアーレントの誤読かのいずれかである。ヤスパースの実存哲学は、理性的な他者との実存的交わりを説くことによる限界状況の彼方にある実存に自己が目覚める哲学的思想である。ヤスパースの哲学は、他者とのコミュニケーション理論ではなく、理性による論理空間上の知的営みである。アーレントが哲学の方針とした「手摺のない思考」は、西洋哲学史の知見に依拠しながらも、何ものにも依存しない独立した政治思想を樹立することを意味したはずである。そのような疑問はあるにせよ、アーレントの著作の読解は素晴らしく、理論的にも明解である。ユダヤ人として全体主義に立ち向かうためには、ハイデガーの存在論では無理である。師の限界に気づいたアーレントがヤスパースに師事したのは、ヤスパースの「限界状況」概念に惹かれたからであろう。ヤスパースが取り上げた「罪・争い・死・苦しみ」は、そのままアーレントが直面した全体主義(ファシズム)の政治的状況そのものであった。こうして現実生活=全体主義がアーレントによって、克服すべき限界状況を意味したのである。その彼方にユダヤ人としての真の実存が見えたのである。全体主義の彼方に実存を見いだしたアーレントと、ナチスにドイツ民族の命運を共存在として託したハイデガーは、まさに対照的である。両者の思想的比較も面白い。著者の精緻な理論的読解に付き合うことで、新たに見えてくる政治思想的課題があるはずだ。本書は近年希にみるアーレントに関する好著である。お勧めの一冊だ。
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